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戦国ラブドール
第19章 愛憎
目を逸らしても、顔が僅かに赤くなっているのはごまかせない。適当な事ばかり言っているが、行動は心をよく表していた。
「あんたって、本当によく分からない人間だね」
「腹の底を読まれては、先手を取られてしまいますからね。分からないくらいが人間ちょうどいいんです」
「そう……かな。分からないと、それで人を苛々させちまうじゃないか」
「どうしても分かって欲しい事なら、直接口にして言えばいいんです。それをしないで態度で察せと文句をこぼすのは、身勝手ですよ。なんのために人は口を持っているんです? 私は、絶対に伝えたい事はきちんと言葉と文に残しますよ」
「文も?」
「言葉だけでは、後で言った言わないで揉めるかもしれませんからね」
抜かりない行長に、大海はつられて笑ってしまう。笑い声に頬を緩めた行長は、立ち上がると棚から女物の着物を取り出した。
「汚れた着物で仕事に戻れば、志麻さんにどやされるでしょ。着替えてから戻った方がいいですよ」
「あ、ありがとう」
「なに、礼は熱い口吸いで構いませんよ。じゃ、また今度」
行長は先に部屋の外へ出て行き、大海を置いて立ち去る。
「まったく……本当にする気もないくせに、なんで軽口ばかり叩くかね」
大海が呟いた疑問の答えを知る男は、既に足音も聞こえないほど遠くに歩いていってしまった。