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戦国ラブドール
第19章 愛憎
「大海!!」
「ごめんなさい……でも、あたしは半兵衛殿を放っておけない。心配してくれるのは有り難いけど、あたしは大丈夫だから」
大海を抱き締めると、いつ張り裂けてもおかしくないほど厳しかった半兵衛の表情が緩まる。安息を得た鳥のように柔らかなそれに、高虎は何も言えなくなってしまった。
「では――また今度」
半兵衛はそのまま大海を連れ、立ち去ってしまう。高虎はその背中を見つめ、頭を掻きむしった。
「この馬鹿、すっかり取り込まれやがって……」
高虎とて、何か追い詰められている半兵衛を前にすれば、大海が放っておけないと考えるのは理解出来る。だが、狂気をはらんだ手が向かうのは、果たして真っ直ぐな道なのか。高虎は、半兵衛が見せた表情以上に、大海を引き止める手段を持たなかった。
大海を追いかけたくとも、高虎には小夜の見張りもある。市松は先の事件により謹慎中であり、今日ぐらいは虎之助をそばに置いてやろうと暇を出した。行長には昼間の見張りを任せている。今動けるのは高虎自身と孫六だけだが、孫六を呼びたくはない。そうなれば、自らで見張るしかない。
半兵衛の元ならば紅天狗も易々と手は出せない。そう信じ、今は留まるしかなかった。