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戦国ラブドール
第19章 愛憎
「関係ならある。こいつは俺の側女になる女だ。地位も名誉も、賢い頭も持ってるあんたが、いまさら女なんていらないだろ。面白半分で手を出されちゃ困るんだよ」
「秀吉は、彼女を子飼いのものとして下げ渡したのです。あなたが側女にもらう道理はありませんが?」
「それを言うなら、あんたがこいつを犬扱いする理由もないな」
高虎は並みの人間ならば心臓を縮ませる殺気を放つが、半兵衛は揺るがない。今にも霞となって消えてしまいそうな見た目とは裏腹に、強固な根が張っているようだった。
「私達の言い争いに、意味はないでしょう。大海、あなたはどちらを選ぶのですか? 私を見捨て――彼を選びますか?」
半兵衛が訊ねると、大海は二人を交互に眺める。今の半兵衛に従えば、何をされるか分からない。しかし、大海が結論を出すより早く、半兵衛はもう一度呼び掛けた。
「……大海、こちらへ来なさい」
冷徹に聞こえる声は、どうしてかその奥に悲哀が見える。大海は、ここで無視してしまえば、本当に半兵衛が消えてしまうような気がした。
「――大海、行くな!」
高虎が怒鳴るが、大海の足は自然と半兵衛の元へ向かっていた。