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戦国ラブドール
第21章 急転
 
 高虎の言い方は、まるで半兵衛が大海を虐げ支配しているような印象である。事実その印象は間違いではなかったようで、高虎は舌打ちし両腕を前に組んだ。

「惚れた女を出来損ないの犬扱いするのが愛情ってなら、俺は愛なんて知らねぇよ」

「あの人が、そんな事を?」

「……問題は、そのいざこざが起きた時だ。俺は昨日侍女の屋敷を監視していた。男はおろか、侍女ですらそこから出入りはしていなかった。竹中半兵衛以外の人間はな。そして揉めたその時だけは、俺は屋敷から意識を離していた。その時に屋敷へ侵入したのだとすれば、俺も気付かない可能性がある」

「! 高虎さん、その揉め事って、いつ頃起きたんですか!?」

「あれはまだ宵の口、お前と市松が一緒にいる時間だ」

「じゃあ、これで市松の嫌疑は晴れるじゃないですか!」

 だが高虎は首を振り、否定する。

「真犯人が、その時侵入したという確証はない。俺の監視は完璧だった、と言いたいところだが、それも、一人ならばどこかに穴があるかもしれない、と言われればそれまでだ。万人を納得させられる証拠にはならない」
 
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