この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦国ラブドール
第21章 急転
「それは……じゃあ、どうすれば、市松は……」
「だがな、虎之助。証拠はないが、俺はその時犯人が侵入したんだと思う。監視に手抜かりはなかった。俺が監視していたあの一晩、竹中半兵衛以外の人間は、誰も屋敷へは入っていないはずだ」
高虎は他人にも自分にも厳しく、仕事は必ず完璧にこなす人間である。虎之助も、その見立ては間違いないと信じられた。証拠にはならないが、市松は犯人ではない。確信を得られ、虎之助は安堵した。
「一つ手落ちがあったとすれば、竹中半兵衛が屋敷へ入ったその時、奴を疑わなかった事だ。そもそもあの男は妹の方と親しいのだと思っていたし、大海にそこまで歪んだ執着をしているとは知らなかった。あいつを、屋敷の中に入れるべきじゃなかったんだ」
「けど、高虎さん。秀吉様も秀長様も出陣されている今、半兵衛様は城一番の権力者です。秀吉様の覚えもめでたいあの人を疑うなんて、まともな武士ならありえないでしょう」
「その偏見が、事態を引き起こしたんだ。考えてみろ、もし犯人と竹中半兵衛が繋がっていたとしたら?」
半兵衛は大海を連れ出し、犯人は小夜を犯す。理屈としては、有り得ない話ではない。