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戦国ラブドール
第21章 急転
大海も相当堪えたのか、尻餅をついたまま固まってしまっている。志麻は仕方なく大海の顔の前で手を叩くと、怒鳴り声を上げた。
「あなたがそんな事でどうするのです、立ちなさい!」
「っ、志麻さん……」
志麻は襖の奥へ耳を傾けるが、小夜の泣き声は止まない。普段の小夜なら、大海が叱られていれば、庇いに入るはずだ。正常な精神を取り戻していない事は、確かであった。
「……ここは、他の侍女へ見張らせます。泣き疲れて腹でも空けば、そのうち出てくるでしょう。あなたは、私の部屋にいらっしゃい」
志麻が心配なのは、小夜ではなく大海の精神の方である。すぐに手を引くと、泣き声の聞こえない部屋まで向かった。
志麻は部屋に入ると、白湯を差し出し綿入れを肩に掛けさせる。だが、すっかり凍りついてしまった大海が生気を取り戻す気配はなかった。
「大海さん、しっかりなさい。あなたが崩れてしまったら、誰が妹を支えるのです? 今は皆混乱して、思わぬ言葉も出るかもしれません。しかしあなた方は、たった二人の姉妹なのですよ」
「志麻さん……」