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戦国ラブドール
第21章 急転
市松は近くの縁側に腰掛け、夕焼けの赤から宵の黒へと変わった空を眺める。今日の空はやけに澄んでいて、星もいつもより瞬いている。だが明るい夜空を見上げる力さえ、今の大海にはないようだった。
「大海、あのさ……孫六から聞いた。お前も、俺を信じてくれたって。お前には散々酷い事をしたってのに……ありがとな」
「……でも、あたしはあんたを疑うのが正解だったかもしれない」
「な、なんでそんな事言うんだよ。俺、嬉しかったんだぜ!?」
「でも、そのせいで小夜は追い詰められたんだ。あんたの無実は、あたしだけじゃなくて皆信じてた。つまりそれは、それだけ小夜が信じられてなかったって事だ。だったらあたしは、小夜に寄り添ってやらなきゃいけなかったのに……」
市松には今一つ事情が分からないが、大海は肩を落とし、涙をこぼす。
「あたしはいつだって自分勝手で、人の気持ちが分からなくて、傷付けてばっかりで……こんな自分が、大嫌いだ」
「大海……それを言うなら、皆そうじゃねぇか。俺だって身勝手にお前を傷つけてるし、他の奴らだってそうだ。誰も傷つけないで、他人を全部理解してる奴なんか、どこにもいねぇよ」