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戦国ラブドール
第21章 急転
行長が市松と睨み合う中、孫六はぽつりと呟く。
「皆で食べられる、甘いもの……」
それを聞きつけた吉継は、横目で佐吉を窺いながら提案してみた。
「じゃあ、柿とかはどう?」
「吉継、柿は胆の毒だ」
「……言うと思った。もう、じゃあ何を食べればいいのか、佐吉が決めなよ」
「なぜ俺が決めねばならんのだ。大体、何かを絶対に食べなければならない、という話ではなかっただろう」
「今はもう何か食べたい気分だもん。大海も、お腹減ったよね?」
「え? 言われてみれば、今日何も食べてないかも……」
「ほら。お腹が空けば、気持ちも沈む。佐吉、志麻さんに頼んで何か持ってきてもらってよ」
「なんで俺があの陰険な女に! 使い走りに行かせるなら、市松にでも行かせろ!」
あちこちで始まる小競り合いは、暗い夜を賑やかにする。自然と零れる笑みは、明日を踏み出す一歩の力となって、大海に染み渡った。
「酒でもカステラでも柿でも、全部持ってくればいいじゃないか。あたしは……あんたらが気遣ってくれたものなら、何でも嬉しいよ」
大海の一言で、小競り合いは止まる。言い争っていた彼らは、皆いい笑顔を浮かべていた。