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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
「いや、今は理解しない方がいいと思う。お小夜ちゃんの身に加えて、自分の身も案じなきゃいけないと分かったら、いくら大海が強くても折れかねないよ。ここは、市松が抑えてくれるのを信じよう」
曹操が求めるのは、小喬だけでなく大喬もである。小夜を心配するあまり、狙われているのは小夜だけではないと、大海はまだ気が付いていなかった。だが気付いてしまえば、動揺した心がどう動くか想像もつかない。吉継は、今は小夜で頭を一杯にさせた方が、かえって見張りやすいと読んでいた。
「佐吉は、すぐに門番へ検問の強化を掛け合って。僕と行長は、侍女達に声を掛けてお小夜ちゃんを探す。孫六、君は城の武士達に声を掛けて城下へ捜索に回って。虎之助は、高虎殿に報告を。多分、見張りで近くにはいるはずだから」
姉妹の部屋は、扉が開かないよう細工され、さらには侍女達が交代で見張りをしていた。その状態から、どうやって紅天狗が小夜を連れ去ったのかは、誰にも見当がついていない。しかし今は、考えるより小夜を探すべきだと、皆動き出す。小夜が見つかるかもしれないという、僅かな可能性に賭けて。