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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
大海は部屋を飛び出すと、小夜を探そうと廊下を見回す。そしてあてもなく、近くの部屋の襖を一つ一つ開けていく。異変に気付いた市松と吉継も、すぐ駆けつけた。
「なんだ、どうしたんだ!?」
「小夜が……小夜がいないんだよ! 誰かに、攫われたんだ!!」
大海の手に握られた赤い布を見て、二人も悟る。紅天狗が、小夜を拐かしたのだと。
「大海、君は市松と一緒に志麻さんに報告に行って。僕達は侍女の皆と一緒に、お小夜ちゃんを探す。分かった?」
吉継はすぐ大海に指示を出すが、大海は首を振りうろたえる。
「あ、あたしも、小夜を探す!」
「駄目だ! いいから、今は僕に任せて!!」
いつも飄々とした吉継の怒鳴り声に、大海は肩を震わせる。吉継が市松に目を配れば、市松は頷き大海を横抱きにした。
「市松っ……離せ!! あたしも、小夜を探さなきゃ!!」
「市松、分かってるね? 大海の事、頼んだよ」
大海の叫びには耳を貸さず、市松は屋敷の奥に引っ込んでいく。その様子を見ていた佐吉は、吉継に訝しげな目を向けた。
「強引に連れて行かずとも、説明すれば理解したんじゃないか?」