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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
小夜が秀吉の愛妾である事は、誰しもが知っている。噂が全くの事実無根だとしても、それを根拠もなく広める理由がない。下手に噂を流せば、秀吉のお気に入りを貶めたとして、流した本人が罰されてもおかしくないのだから。
「恋仲かどうかはともかく、小夜さんが誰かと会っていたとすれば……その相手が紅天狗の手の者で、彼女を騙そうと近付いたのだとも考えられませんか?」
「あの子が、誰かと……確かに、小夜がおかしくなったとすれば、誰かに悪い影響を受けたとしか思えない。小夜はいつだって優しくて、ひたむきで、あたしの可愛い妹だったんだ」
するとまた、吉継の手に力が込められる。大海が驚き振り向けば、吉継は慰めの言葉を掛けた。
「君が気付かなかった事は、罪じゃない。兄弟や姉妹は、同じ人間じゃないんだよ。いつか自立して、別の道を歩んでいくんだ。何もかも全て知っていられるなんて、子どものうちだけ。お小夜ちゃんは、大人になろうとしてたんだと思うよ」
「吉継……」
「けどね、自立の一歩を踏み出す時、間違った大人が手招きしていたのかもしれない。そうだとすれば、僕はそいつを許さないよ」