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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
同情だけではなく、義憤も隠さない吉継に、大海は胸の奥が熱く締め付けられる。目を見て話せ、と教えられて育ったが、まともに顔を合わせていればそのまま沸騰してしまいそうで、大海はうつむき目を逸らした。
「なんであんたは……そうあたしの考えてる事を先回りするかな。落ち込む隙もないじゃないか」
「落ち込む必要ないから言ってるの。君は、いらない事で心を痛めすぎ。それと、考えてる事がすぐ顔に出る」
「う……」
「今も、全部顔に出てるよ? そうだな、今は――」
「い、言わなくていい! お願いだから、そうじろじろ見ないで!」
「仕方ないなあ、でも、手は離さないからね? 今日はずっと、君を見張ってるから」
見張る、という言葉に、大海は今までと違う種類の動揺を覚える。小夜の事で頭が一杯になっていたため、考えてもいなかったが、紅天狗の残した『銅雀台の賦』は、大喬も欲しているのだ。
「そろそろ頭も冷えて、気付いたかな? 狙われているのは、君もだよ。君まで紅天狗に攫われたら、僕達は完全に敗北する。これからは、君を奪われないよう立ち回りつつ、お小夜ちゃんを救わなきゃならないんだ」