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戦国ラブドール
第22章 束の間の夢も
「は、はい。がらくたを捨てに、向かっておりました」
さくやは、大きめの袋を引きずって歩いていた。孫六が眉をひそめれば、さくやはさらに補足する。
「今日、お小夜さんを探す時、あちこちひっくり返したでしょう? その時にいらないものがたくさん出てきたから、整頓しようと志麻様が言い出して」
「……気を付けろよ、いくら城の中とはいえ、あまり夜中に女が出歩くのは感心しない。ましてやお前、体が弱いんだろう」
孫六はそう言い残し、再び門の方へ歩き出す。するとさくやはそれを引き止め、孫六に訊ねた。
「あの、あなた様こそ、どちらへ? 夜中は、危のうございます」
「別に、大した用事ではない。撒いた餌に群がる魚の足元を、掬ってくるまでだ」
「それは、どういう……」
だが孫六はそれ以上何も語らず、立ち去ってしまう。止めるにも止められず、さくやはただ首を傾げる。だが孫六の足取りは、迷いなく真っ直ぐであった。
門を抜け、孫六は城下町への道を向かう。そしてその道中には、それを物陰から眺め、窺う存在が潜んでいた。