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戦国ラブドール
第23章 赤壁の戦い
朝の清々しい空気が流れる廊下を、一人の小姓が足音を立てて走る。彼が汗を掻き悲壮な面持ちで向かったのは、虎之助の元だった。
「大変です、虎之助さんっ!!」
「なんだ、朝っぱらから……」
「孫六が、孫六がっ――賊に、拘束されました!」
「……な、んだってっ!?」
朝に似つかわしい報告に、虎之助は飛び上がり目を見開く。冗談かと思ったが、小姓の眼差しは至って真剣だった。
「現場を目撃した商人が、訴えに来たのです。孫六を助けて欲しいと――」
「そいつは、まだここにいるのか!?」
虎之助は小姓の襟元を掴み、怒鳴り声混じりで訊ねる。
「は、はい。今は、詳しい事情を聞くため城に」
それを聞くと、虎之助はすぐに城へ駆け出す。昨日は小夜、今日は孫六。話が本当だとすれば、それはとても偶然とは思えなかった。
城の一室で、目撃者と言われる商人は武士に事情を説明していた。虎之助はそこへ乗り込み武士達を押しのけ、商人へ迫る。
「孫が拘束されたって、どういう事だ!! 今すぐ、全て話せ!!」
突然現れた虎之助に、商人は面食らう。だが虎之助の手を掴むと、青い顔で必死に訴えた。
「あの若武者は、町の人間皆の英雄なんです……いくらでも話しますから、どうか助けてやってください!!」
「孫が……英雄?」
しばらく単独行動を取っていた孫六である。その間何をしていたかは、虎之助も知らなかった。聞かされた商人の話は、驚くものだった。