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戦国ラブドール
第23章 赤壁の戦い
夜は賊が目覚め、闊歩する時間。町人にとっては息を潜め静かに過ごす時間であるが、長浜の城下には輝く星があった。
「孫六さん、今日も夜回りですか? いや、まこと助かりますわい」
大きな商家の門を見張る壮年の警備員が、歩いてきた孫六に声を掛ける。足を止め、会釈したのは幼い顔立ちの少年、孫六。だが彼が、この町にとっては頼りがいのある星だった。
「町の方は、変わりないか?」
「なに、孫六さんが見回ってくれているおかげで、悪さをしようなどと企む者はいなくなりましたよ。あの紅天狗だって、噂を聞きつけたのか、最近は出てこない」
「そうか、ならば良い」
「片っ端から悪人を捕まえてくださるおかげで、皆孫六さんには感謝しています。今度皆で、お礼に何か差し上げようと話しているところですよ」
「礼はいらぬ、この地の平和を維持する、それが秀吉様の役目であり、秀吉様の手足である私の役目なのだ」
「しかし、こうして積極的に町へ繰り出す方はそう多くはありません。現場に赴き、声を直接聞いてくださる、そのお気持ちが嬉しいのです」