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戦国ラブドール
第24章 赤壁の戦い②
顔に似合わない物騒な言い草だが、それは小夜をようやく安堵させる。希望を気に食わない男――高虎に託すのは癪だが、それで小夜が落ち着くなら、孫六は憤りを飲み込んだ。
「しかし……それにしても、一つ不思議だ。市松の冤罪事件の日も、お前が攫われた日も、侍女の屋敷には見張りがいた。後者に至っては、部屋の前にまでいたはずだ。半兵衛様は、どうやって見張りをかいくぐり、お前に指示をしたんだ?」
時の流れや小夜の説明を聞く限り、見張りのいる時間に、半兵衛が小夜の前に現れなければ話が通らない。だが見張りをかいくぐる方法は、いくら考えても謎のままだった。
「それは、わたしも分かりません……ごめんなさい」
「いや、謝る事ではない。それより、辛い話ばかりでは気が滅入るだろう。奴らがこうして寝ている間だけでも、嫌な事は忘れた方がいい。今の私に出来る事と言えば話をするくらいだが、楽になるなら付き合おう」
「あ、ありがとうございます……あなた、優しい人なんですね。そんな人がいるなんて、わたし知らなかった」
賊が目を覚ませば、小夜の地獄はまた始まる。だが、希望が見えていれば、絶望に堕ちる事もない。小夜の精神は、細い糸のような光で繋がれていた。