この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
戦国ラブドール
第24章 赤壁の戦い②
半兵衛に告げられた日、子の刻。紅天狗が指定した時間より早めに、大海は動き出す。
「さあ、こちらです大海。足元に気を付けてくださいね」
皆へ悟られないように、明かりは半兵衛が一つ持っているだけである。何か手引きしたのか、城はそう難しくなく抜け出せた。
城下町を通り、二人は歳月寺の跡地まで向かう。真夜中の町は異様なまでに静まり返っていて、人の気配がない。大海は、皆に案内され町を回ったのが、果てしなく昔の事のような気がした。
(あの時は、ただ能登に帰りたいだけで……まさか長浜の武士のために、囮になるなんて思いもしなかった。縁ってのは、不思議なものだね)
すると半兵衛はふと足を止め、振り返る。
「大海」
「なんでしょうか、半兵衛殿」
「このまま、二人で何もかも捨てて逃げてしまいましょうか?」
「え……?」
「あの子達も、秀吉も、立場も責任も、道徳すら捨てて、私の故郷――美濃で、互いの瞳だけを見つめ合って暮らしませんか?」
半兵衛は淡々としていて、大海にはそれが本気なのか冗談なのか分からない。大海が返事を詰まらせると、半兵衛は明かりを投げ捨て大海を抱き締める。