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戦国ラブドール
第24章 赤壁の戦い②
 







 半兵衛に告げられた日、子の刻。紅天狗が指定した時間より早めに、大海は動き出す。

「さあ、こちらです大海。足元に気を付けてくださいね」

 皆へ悟られないように、明かりは半兵衛が一つ持っているだけである。何か手引きしたのか、城はそう難しくなく抜け出せた。

 城下町を通り、二人は歳月寺の跡地まで向かう。真夜中の町は異様なまでに静まり返っていて、人の気配がない。大海は、皆に案内され町を回ったのが、果てしなく昔の事のような気がした。

(あの時は、ただ能登に帰りたいだけで……まさか長浜の武士のために、囮になるなんて思いもしなかった。縁ってのは、不思議なものだね)

 すると半兵衛はふと足を止め、振り返る。

「大海」

「なんでしょうか、半兵衛殿」

「このまま、二人で何もかも捨てて逃げてしまいましょうか?」

「え……?」

「あの子達も、秀吉も、立場も責任も、道徳すら捨てて、私の故郷――美濃で、互いの瞳だけを見つめ合って暮らしませんか?」

 半兵衛は淡々としていて、大海にはそれが本気なのか冗談なのか分からない。大海が返事を詰まらせると、半兵衛は明かりを投げ捨て大海を抱き締める。
 
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