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戦国ラブドール
第25章 赤壁の戦い③
二人の転がる床に広がる血溜まりと、鉄の匂い。死という言葉に、大海は体を強張らせる。
「……怖い?」
吉継が大海に訊ねたのは、死という事実か、それとも吉継自身の事なのか。大海には判断がつかなかったが、迷いなく首を横に振った。
「そういう因果なら、是非もないよ。あんたは、あたしを死から救ってくれた。あたしにとっては……その事実が一番大事だ。帰ろう、吉継」
大海が足を踏み出せば、吉継も大海を支えて歩き出す。小屋の外に出れば、どれほど時が経っていたのか、辺りは夕空に染まっていた。
「あ……」
ここがどこなのか、大海には全く分からない。見回してみればここは高台の上だったようで、眼下には城下町、そして長浜城が広がっていた。
「今日は、綺麗な夕焼けだね」
吉継も足を止め、しばらく景色を眺める。町も城も、そして近江を支える近淡海も、寒さを忘れるくらい暖かな夕焼け色に染まっていた。
すると吉継の手が、大海の頭に伸びる。吉継は夕空と同じ色をした大海の髪を撫でながら、ぽつりと呟いた。
「僕は、この赤が一番好きだ」
瞼に焼き付いた血生臭い赤は、一言で夕焼けの赤に変わる。夕陽はゆっくりと沈み、名残惜しまれながらも未来へと時を進めていた。