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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
城へ戻った後は、大海を心配し駆け回っていた皆が、治療中にも関わらず代わる代わる押し寄せ時が過ぎた。大海の怪我には心を痛めながらも、無事を喜び、つい騒ぎすぎて医者に怒られる。紅天狗の件は今度こそ落着したのだと、大海は皆が安堵する様を見て実感した。
一通り皆が顔を出した後は、小夜がずっと大海のそばに付いていた。そこへ再び顔を出したのは、行長だった。
「大海さん、小夜さん、夜も暮れた中、失礼します。実は一つ、良い知らせがありまして」
「良い知らせ?」
「ええ。お二人の父君が今、長浜に到着されました」
父親の話に、大海より小夜が驚き目を丸くする。行長はそんな二人に微笑むと、襖を開いた。
「大海、小夜!!」
向こう側に立っていたのは、もう二度と会えないと覚悟していた父親。二人の娘を取られて気を病んだんだろう、頬は少しこけ、やせ細っていた。
だが、間違いなく、それは大海と小夜を男手一つで育てた優しい父親。大海も小夜も、涙が溢れ父親に駆け寄った。
「お父さん!」
親子の再会を見届けると、行長はそっと席を外す。そして曲がり角の先、様子を見ていた子飼い達に首を振った。
「邪魔をしてはいけませんよ。せっかくの親子の再会ですからね」