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戦国ラブドール
第26章 かわいそうなこどものおはなし
 
 皆が見守っていた事を知らず、大海は親子の団欒を過ごす。自分達が長浜で見たもの、父が娘を失ってから、小西家の連絡が来るまでのいきさつなど、話はいつまでたっても尽きなかった。

「お父さんは、じゃあこれから堺の――小西さんのお家へ行くの?」

「ああ、しばらくは小西家で厄介になるつもりだ」

「わたし、お父さんが近江の商人だなんて全然知らなかった。お姉ちゃんも、教えてくれたらよかったのに」

「ごめんごめん。けどさ、もし違っていたら、がっかりするだろ? 真実だって分かるまでは黙ってようって、行長と話してたんだよ」

「そこでだ、大海、小夜。お前達に話がある。お前達も共に、堺へ来ないか?」

 思わぬ父の言葉に、二人は言葉を失う。堺へ行く、それはただ観光に誘った訳ではない。秀吉に攫われたその日と同じ、人生の大きな分岐だった。

「小西さんが、秀吉にも掛け合ってくれたんだ。向こうは、娘が行きたいと言うなら暇を与えても良いと返事をくれたらしい。だから、城での立場を気にする必要はない。お前達の、気持ち一つだ」

「秀吉が……それ、本当に?」

「ああ。そうでなければ、一緒に行こうなんて言えないさ」
 
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