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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
ぱちぱちと弾ける火の粉が、暗闇を照らしては消える。刹那に浮かぶ景色は、村で暮らしていた頃の平和な日常である。
「う……」
だが、目が覚めれば、まだ朝は迎えていなかった。それどころか、また見知らぬ部屋の中。着物は脱がされ、大きさが足りない男物を上に掛けられているだけだった。
「目、覚めたのか?」
暖かな炎が揺れる囲炉裏の向こう側から、声を掛けられる。大海は体をなるべく隠しながら顔を上げるが、その姿に思わず気が緩んだ。
火箸で囲炉裏の隅をつつきながら、仏頂面で訊ねてきたのは、小夜と同い年くらいの少年だった。それも小柄で可愛らしい顔立ちのため、あまり男を感じない少年である。よくよく見れば、囲炉裏の側には大海と、少年のものらしき着物が干してある。大分乾いてはいるが髪も濡れているし、恐らく少年は水堀に落ちた大海を助けたのだろう。
「柿、一宿の礼に貰ったから」
「柿……?」
「お前と一緒に落ちた柿。ちょうど良く冷えてうまかった」
もう秋も深いというのに、冷えた物を食べたら普通は身が凍えるだろう。少々変わった少年に、なんと声を掛けるべきか大海は迷った。