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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
「あたしなんか……放っておいてくれたら良かったのに」
そしてつい口にしてしまったのは、助けてくれた相手へ一番投げかけてはならない言葉。大海はすぐに口をつぐむが、少年は顔色一つ変えず、灰を火箸でかき混ぜていた。
怒っているのか、呆れているのか。少年の無愛想な顔からは、何も読み取れない。大海がさらに困ると、少年はようやく口を開いた。
「別に、私の知らないところで身投げしたなら、助ける道理もない」
見た目は幼いが、少年は大人びた声と話し方をする。だが冷たさもそこには混じり、少年の無愛想がさらに際だっていた。
「だが、目の前で飛び込まれたらまた助ける。それは私の勝手だ」
少年は、どうして身投げなどしたのかとは追及しなかった。命を無駄にするなと説教する訳でもなく、それきりただ黙っている。聞かれても困るが、聞かれないのも落ち着かないものだった。
「一応……礼は言うよ。あたしは、もう行く」
「着物は、まだ乾いてないが」
「どうせ死ぬ身空なんだ、構わないよ」
大海は上に掛けられていた着物で前を隠しながら立ち上がり、生乾きの着物を掴もうとする。