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戦国ラブドール
第4章 子供の時間
「え、あ、ああ……」
「まあ、それくらい虎之助は面倒見のいい奴でもあるってこった。仲良くしてやってくれよ」
大海は市松へ苦手意識を抱いていたが、こうして話してみると印象は全く違う。今日の市松は、強引だが友の気持ちも汲める好漢だった。
(……ほんと、分からない事だらけだよ)
目の前にいる二人は、大海を慰み者にした敵である。だが非道な一面はすっかりなりを潜め、今は嫌悪も感じない。同じ人間であるはずなのに、そこには好意と悪意が当たり前のように住み着いている。大海自身も、嫌悪したはずの行為を気持ちいいと思ってしまった。
どうして、矛盾した二つが一人の人間に存在するのか。大海はまだ、その答えを掴めてはいない。
(ここで暮らしていけば、分かるようになるんだろうか)
辛い思いも、大海は山ほど抱えている。だが投げ掛けられた疑問は、大海を現世へ――長浜城へ留まらせていた。
「あたし……小夜のところに戻るよ。初日から仕事を怠ける訳にはいかないから。小夜と話もしたいし」
大海は虎之助から身を離すと、お辞儀して侍女の屋敷へ掛けていく。朝はまだ始まったばかり。日は、まだまだ高く昇ろうとしていた。