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戦国ラブドール
第5章 壊れたドール
一晩戻ってこなかった大海に、小夜は何も訊ねなかった。いくら子どもでも、小夜とて察しているのだろう。あるいは、秀吉が閨で何かを語ったかもしれない。
「お姉ちゃん……小夜を、嫌いにならないでね」
小夜が口にしたのはたった一言。小さな手で縋る小夜に、大海は罪悪感を覚えていた。
「嫌いになんてなるもんか。あたし達は姉妹なんだ、ずっと一緒だよ」
小夜だって不安と戦っているのに、自分だけが辛さから逃げ出すなど許されない。衝動的に自害など、もってのほかである。
美しい、姉妹の絆。それはがんじがらめに大海を縛る鎖にも見える。だが大海は、自ら望み縛られる事を選んだ。
そのたった二日後、本当に縛られる事になるとも知らずに。
二日目の昼まで、大海は侍女として忙しく働いていた。新しい事は、何も心情だけではない。まだ覚え切れていない城の構造も、慣れない仕事も、全てが大海に迫っているのだ。幸いこの二日間は子飼いの誰かと顔も合わせず、頭を悩ませる必要もなかった。
事件が起きたのは、夜だった。