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禁断の果実に口づけを
第15章 メリクリ
ファーストフード店でランチのセットのハンバーガーとポテト、珈琲などを頼み、暫しの休憩をとる。
周りを見渡せば、家族連れやカップルで店内は賑わう。
『シングルベルは肩身狭いね…
今時はクリぼっちと呼ぶらしいけど…。
ハァ……夕飯はどうしょう?
一応、ケーキとシャンパンとチキンくらいは買って、DVDでも借りて見ようかな?
寂しい気持ちを吹き飛ばずならコメディーかしら?
間違っても、こんな日にラブストーリーなんて借りたら惨めだよね。
何ならホラーとかサスペンスにしてみる?
怖さで寂しさ吹き飛ばす…なんてね』
「ねぇ、ママ。
今日サンタさん来る?」
「まぁくんが良い子にしていたらね」
「ボクは良い子だよ!」
「そうかな?」
「お夕飯にはケーキとフライドチキンとサラダとピザ屋さん来るんだよね?」
「そうだよ」
席の近い親子連れが話をしていた。
サンタを信じている男の子は歳頃は三、四歳くらいに見えた。
アイスクリームを食べながら、クリスマスの夜を思い描いてはしゃぐ姿。
子供に恵まれなかった洋子は、普段なら喧しいと嫌悪する場面だった。
僻みから出る感情を抑えられずにいた。
元夫の隆平との間に子供を授かっていたら、仕事の忙しい夫を支えて専業主婦となり、クリスマスにはローストチキンを焼いていただろう…
サンタを信じる子供の枕元にオモチャを置いて、隆平と共にスヤスヤ眠る我が子を眺めながら月日を重ねていったはずだった。
そう思えば思う程、やるせない気持ちに支配されてしまっていた。