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禁断の果実に口づけを
第15章 メリクリ
家に帰り、洋子はキッチンに入る。
久々にエプロンをしてみた。
普段、全く料理をしないキッチンは綺麗なままだ。
食材をダイニングテーブルに並べ、幼き日のクリスマスを思い出しながら、母直伝のローストチキンを作りに取り掛かる。
ローズマリーなどのハーブで匂いを消し、下味をつけてゆく。
秋山家秘伝の隠し味はマーマレード。
本来なら時間を掛けてチキンに味を染み込ませるが、生憎その時間がないので、下作りが終わった状態でオーブンで焼き上げた。
その間に付け合わせとして、キャベツとキュウリ、玉ねぎなどを刻み、コーンで飾ってコールスローサラダを仕上げる。
『馬鹿ね。
昨日から思いついていたら、もっと美味しく作るのに…』
オーブンで焼き上がったローストチキン。
付け合わせのコールスローと一緒に使い捨てのタッパーに詰めてゆく。
こういうクリスマスプレゼントなら負担にならないでしょ?
洋子は出掛ける仕度を始めた。
柄ではないが、クリスマスカードも添えた。
『留守の可能性もあるしね…』
悲しい事に、会う前に気軽に連絡を取れる関係でもなかった。
この間は勢いのまま進んでしまったが、世間はクリスマス。
家に居る保障なんてない。
それでも、心ばかりのクリスマスプレゼントを伸介に届けたかった。
買ってきたばかりの洋服に着替え、化粧直しもする。
『クリスマスは特に女をサボらない。
クリスマスは少しばかりの夢、見てもいいじゃん!!
純粋にプレゼントを渡したいだけよ』