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禁断の果実に口づけを
第16章 砂の城
「女にうつつを抜かしてると足元すくわれるわよ、健!
細川が怪しい動きをしている」
「細川?」
「まさか、気づいてなかったわけないよね?」
「優美子とのことか?」
「ええ、そうよ。気づいていたのなら尚更よ!
何で手を打たないの?」
「気づいていても、言えた義理じゃないだろう…」
「確かにそうかもしれないけど、あの二人はあんたの失脚を狙っていて、裏から手を回して様子見をしていたのよ!」
「えっ!?何だって!!」
「健が運用資金の一千万が動かした時に、経理の横澤が厭な含み笑いをしたのをわたしは見逃さなかった。
問い詰めたら、『社長の横領じゃないですか!』って開き直ったわ。
細川に金の動きをチェックする様に指示を受けていたみたい。
内部告発するつもりよ」
「あの金だって、俺が稼いだ金だ。
どう遣おうと俺の自由だ。
利益が出れば出た分、社員には尽くしてきたはずだ!」
いきり立つ健に対し、あくまでも冷静に諭す真雪。
「甘いよ!健。
会社の利益はあなただけのものじゃない!
今回の事は、その甘えが引き金になっている」
「じゃあ、どうすればいいんだ!」
憤りの矛先を真雪に向けても仕方ないのに、腹の虫が上手く治まらず、親に叱られて逆ギレをする子供の様に怒鳴る事くらいしか出来ない健。
一瞬、健の怒鳴り声で店内は静まりかえった。
真雪は冷静な態度を崩さず、声のトーンを落として静かに語りかける。
その間、頼んだオダーがテーブルに運ばれたが、真雪が店員に『すみません。大丈夫です』という仕草をし、その場の雰囲気を抑えた。
「会社が大きくなった事で慢心してしまった健には、これから手厳しい現実が待っている。
けど、最悪な状態にならない様に今からでも手を打つの。
あんたの城が落城の危機を迎えているって事は確かよ。
わたしも出来る限りの協力はする」