この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実に口づけを
第16章 砂の城
暫しの沈黙の後、焼き鳥の串を摘みながら真雪が静かに言った。
「すっかり、冷めちゃったわね。焼き鳥。
肉が固くなって美味しさは半減するけどダイエット効果にはなるそうよ。
健と優美子さんはこの焼き鳥みたいね」
「焼き鳥?」
「その説を信じて、美しくなりたい、痩せたいから冷めた焼き鳥を食べ続ける人も居る。
でも、美味しくないと舌が判断すれば続かないでしょ?
人にはいい引き際や潮時がある。
散々、やりたい放題だった健にも責任はある」
真雪は強い口調で言い切った。
コップに入った梅干しの水割りの焼酎を一気に飲む健。
冷静さを取り戻してゆこうとした。
「……だな。
真雪の言う通りかもしれないな……。
凄まれた横澤もビビッただろうな?
普段は大人しい真雪オネェが男の形相で立ち向かわれたら、白状しちまうよな」
「ウフフ。かなり横澤ビビッていた。
男の癖にだらしない。
あくまでも細川に秘密の任務を任されていただろうにさぁ…
お馬鹿ちゃんね。
気弱な番犬じゃ役しないつぅーの!
健。
まだ、笑う力があったり、反省出来るうちは大丈夫だよ。
乗り切れよ。
わたしがあんたを男として意識しないのは、あくまでもビジネスパートナーの域を越えない様に自分をコントロール出来るからさ。
作り上げた城も壊したくない欲もあんのさ。
それに、健は女にだらしない。
それさえなければマトモで優秀な男なのに勿体無い!
でも、欠点がない人間なんて居ないさ。
だから、あんたを恋愛感情なしで見れる。
あんただって、わたしをそう思って信頼してくれたから、ビジネスパートナーにしたんだろ?」
「その通りだ。
俺より男らしくて、繊細な女心を理解してそれを洋服にしちまう、魅力的な真雪をビジネスパートナーとして惚れてんだ」