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禁断の果実に口づけを
第16章 砂の城
店を出て、真雪と並んで歩く。
身長は百八十近くある健とさほど変わらないのに、わざわざ高いヒールを履き、ごっつい男の体に丸ノ内のOL顔負けの様な服装を纏って歩く真雪。
周りが振り向く程、真雪の姿には違和感があった。
まるで、『今から二丁目にご出勤ですか?』と思わせる様な姿。
それでも真雪は胸を張って歩く。
「健は堂々としてな!
ビクつく事なんてない。
ただ、その時が来るまで何もなかったふりをするのさ。
狐と狸の化かし合いが当分続く。
奴等も馬鹿じゃない。
年末や年明け早々には仕掛けてこないだろうさ。
新しい年が始まってから勝負だよ」
「あぁ」
「暫くは女は自粛しなよ。
それと、健………
自分の子供の事を少しは考えなさいよ!
本来は人の子より、自分の子だろ?」
「……だよな……」
「あんたにだって、未来を託す息子がいるんじゃないか!
今、あんたの付き合っている女との未来がないのなら、これを機に手を切りなよ!」
「…………………………………………」
「そうやって無言になるって事は、かなり本気(マジ)か……。
仕方ないね。欲張りお殿様は。
でも、わたしが最後まで守れるのは健だけよ」
「………いろいろ頭の中整理しないとな…」
「一人になって、冷静にこれからの事を考えな!」
真雪はそう言った後、思い切り健の背中を叩いて喝を入れた。
「痛!」
クスッと笑う真雪。
「痛いだろ!真雪。
……真雪が女だったら道は間違えてなかったよな…」
「わたしはヤダね。こんな面倒臭い男。
シンプルで分かりやすくて守ってあげたくなる様な子犬系がいいわ〜。
威勢だけはいい野生猿はごめんだよ!」
健を茶化す真雪。
「あぁそうかよ!」
空元気でも、こうしていた方が安心出来た。
『輝(ひかる 健の一人息子)や朋子には迷惑を掛けない様しないとな……。
あいつらだけは巻き込めない。
全てを失っても……』
真雪が健に耳打ちをし、二人は別れる。
健はぼんやりと考え事をしながら冬の夜道を歩いた。