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禁断の果実に口づけを
第17章 嫉妬の炎が揺らめいて
細川理一は何も知らない顔をして出社し、健の行動を伺う。
健は何もなかった振りをして朝礼を済ませ、社長室に入り、年末の店舗運営状況や売上報告などに目を通していた。
当の健は、いくら夫婦としてとっくに終わっていたとしても、今朝の優美子の顔を思い出すと平静を装いきれなくもなっていた。
優美子に対して妻や女として見れなくなっていても、それは優美子一人が全て悪いわけではない。
夫としての自分を問われれば、優美子に寄り添う努力もせずに、今迄過ごしてきたのだから。
遊びで割り切れるならまだしも、夫婦でありながら違う者を求めてしまった時点で破綻は見えていた。
それでも、溜息の数だけ優美子への情も湧いた。
そんな健の様子を見ながら、ある程度の予想がついた細川は、隙を見て経理の横澤を呼んだ。
「少し早いが、頼んでおいた事の確認お願い出来ないか?」
「いよいよですか?細川専務」
「あぁ、頼んだぞ」
「しかし、本当に申し訳ないのですが、副社長が今回の事に気づいてしまいましったようで……」
「ああ……真雪さんでしたか……
どうりでね。
まぁ構わないさ。
彼一人が社長派で居たところでどうにもならんだろ。
これ以上のミスは困りますよ、横澤君」
「本当に申し訳ありませんでした」
「上手く挽回して下さいね」
「……畏まりました」