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禁断の果実に口づけを
第17章 嫉妬の炎が揺らめいて
優美子は高級ブランドバッグの中から封筒を出した。
「秋山さん、あなたは倉橋さんの上司なんですよね?」
「…はい」
「ねぇ、おたくの会社は大手と言われる名のある保険会社よね?
社員になる方にそれなりの教育もなさるんでしょ?」
「はい」
「わたくしね、驚いてしまったの。
こういうやり方で保険を取らせるのかなって」
優美子は封筒を開けて、洋子と朋子の前に中身を並べだした。
その結末を暗示するカードを並べる優美子は、勝者の様な余裕の笑みを浮かべていた。
暖房が効いていて温度調節の行き届いた応接室のはずなのに、寒気を覚える洋子と朋子。
「秋山さん、倉橋さん。
よくご覧になって頂けますか?
わたくし、根拠のないごとを騒ぎたてる程、クレーマーじゃございませんのよ?
まずは、こんな場所で落ち合う二人がどういう間柄なのか、秋山さんに判断して頂きたいんです。
いかがですか?
風間は倉橋さんに保険を提案されただけのお客なんでしょうか?」
洋子は返事を考えるまで、そのカードを一枚一枚眺めた。
ラブホテルの駐車場で落ち合う二人の姿や隣合わせに停めた車、朋子にプレゼントらしきもの紙袋を差し出す風間優美子の夫の姿。
微笑み合う二人の姿など逢瀬の日付までご丁寧に入った証拠写真が並べられたのだ。
もはや言い逃れは出来ない事を認めざるを得なかった。
『アウト!』
洋子の心のマウンドに、物事の分別をつける審判員の声が響き渡っていた。