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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳
「翌日、輝をディズニーランドに連れて行ってくれたのは、父です。
定年を間近に控えていたとしても、頭取という地位でありながら、仕事をキャンセルしてまで孫に付き合ってくれたわ。
『優美子の運転じゃ危ないだろ』と私にまで気を遣って。
私は、まだ立ち上げたばかりの会社で、毎日忙しくて部下達の手前休んでもいられないんだと、苦しい言訳を繰り返していたわ。
私達の結婚に反対だった父に、勘ぐられたくなかったからよ!
哀しいくらい身についてしまうものなのよ。
幸せな奥様を演じる事が当たり前の様にね。
それでも、輝がまだママと言って必要としてくれたうちは何とか我慢も出来ました。
それでも、年頃になれば母親はうざったい存在。
家族に必要とされず、ただ息を吸って生きているだけというのは、どれだけの苦痛なのか、あなたに想像出来ますか?」
優美子の言葉に黙り込んでしまう健。
「倉橋朋子みたいな女、一番嫌いなタイプです。
目の前で見て、今まで溜めてきた怒りが吹き出しました。
黙って堪えるだけの女なんて、屍の様なもんです。
不倫をするあなたの気持ちも理解出来たのよ。
気づいていたんでしょ?
細川との事」
「あぁ…」
「お互い、甘い蜜を吸う場所を奪われたくなくて、夫婦ごっこをしていたなんてね……
終わっているわ!
なら、最期に爆弾を仕掛けてやりたくなった。
粉々に壊して、あなたが私に何をぶつけてくるのか?
楽しみにしているのよ。
壊れしてしまったものに愛着もなければ、怖いなんて思う感情すらもなくなってしまうものなのよ」