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禁断の果実に口づけを
第19章 サヨナラの訳


 「優美子…
最期に俺に何して欲しい?」

 そう呟いた健は涙声になっていた。
優美子はその声に驚き、健をそっと見る。
道路照明灯に照らされ、涙を滲ませる健の横顔が見えた。


 「あなたでも私に悔いたりするの…?
ならその涙に免じて、刑事告訴は致しません。
いくら私と離婚しても、輝を犯罪者の息子にする訳にはいかないわ。
それとも、私と細川との不倫を引き合いに出して、全面的に争ってみますか?
僅かでも、あなたの言い分が通るかもしれませんよ?」

 「優美子とはもう争いたくない!
争うのは辞めにしないか?
輝が居るなら尚更だ。
あいつの事を一番に考えてやりたい。
だから………」

 「なら、輝の親権は私でいいわよね…?」

 「あぁ……構わない。
優美子………輝の事、頼めるか?
これからは、俺が出来る事は惜しみなくするつもりだ。
輝のやつ、留学したいって言っていたんだ」

 「そう……留学ね…。
それもいいかもしれないわね。
いろんな可能性伸ばすのも大事な事よ。
私やあなたみたいな人間にならない為にもね。
子供より自分の欲に走った私達は親失格ね。
それでも、あの子の望みは何でも叶えてやりたい。
こんな私でも、あの子が生まれた日、可愛くて愛しくて幸せで……
希望に満ち溢れました」

 「俺も、あいつの為なら自分の命も投げ出せるくらい愛しいと思った。
そう思ったはずなのに、一番不幸にしちまった。
優美子や輝には本当に済まない事をした」

 「ダメな親だったわね。
私達……」
 
 「そうだな…」
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