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禁断の果実に口づけを
第20章 道標
十五分くらい経過した頃、ガラガラと音を立てて店の扉が開き、真雪が帰ってきた。
一目散に朋子のテーブルに駆け寄る。
目には涙を潤ませ、唇を震わせていた。
「……真雪さん……」
真雪は朋子と顔を合わせた瞬間、大粒の涙を流してその場にしゃがみこんでしまった。
朋子は席を立ち、真雪の側に歩み寄った。
肩を震わせ、嗚咽を堪えながら泣いている。
「真雪さん…一体何があったんですか?」
朋子もしゃがみ込み、真雪の様子を伺う。
「ああああああ……あああああ……どうして!どうして!どうしてよぉ………」
店員や他の客がこちらを見るほど、悲鳴の様な声を上げて泣いてしまった真雪。
ずっと厨房にいた女将らしき人が心配して真雪の所にやって来た。
「真雪ちゃん、どうしたの?悪酔いしちゃったかな?」
と声を掛けた。
どうやら知り合いのようだ。
「ママァー ママー どうしょう…健が……健が………」
「健ちゃんがどうしたの?喧嘩でもした?」
「違う…ううう……うぅぅ……健が…………どうしょ……おおお……どうしょ………おおお……」
「健ちゃんがどうしたの?
真雪ちゃん、取り敢えず落ち着こうか?」
声を震わせて泣いている真雪をなだめる女将。
朋子も只事ではない事が起こってしまったと把握は出来たが、なだめる女将にしがみつく様にオイオイ泣いている真雪の背中を呆然と立ち尽くしながら見ていた。
不安の波が一気に打ち寄せ、朋子の胸に激しく叩きつける。