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禁断の果実に口づけを
第21章 カフェオレの追憶

 自宅に戻り、一人になると涙がまた溢れ出す。
この世に健はもう居ない事実がより一層哀しみの淵に朋子を落としてゆく。
絶望に近い気持ちになったのは、二度目だ。
夫を亡くした時と健を亡くした今。
自分の愛する人は、ある日突然事故によって命を落とす。
そんな因縁を植え付けられてしまったのか…。
神様はやっぱり居ないんだ。
ダラダラと流れる涙は止まらない。
声を上げて泣いてしまいそうな自分を抑える為に、タオルを口に含ませた。
ブルブル震える唇だけが動く。

「はっ、ひっ、はぁ……ひっ」と子供の様にしゃくり上げて泣いた。

 【ピンポーン】とインターホンが鳴った。
朋子は無視をしたが、ドアの外から小声が聞こえてきた。

 「倉橋さん、秋山です…。
いらっしゃいませんか…?
居るなら少し顔を見せて欲しいな。
ねぇ、私もいろいろ考えたの。
落ち着いて話そう。
昨日はごめんなさい。
あなたの話をちゃんと聞いてあげられなくて。
ニュースを見て無我夢中でここに来てしまった。
あなたが心配になった」

 もうどうにでもなれと思った。
訪問者が来るのは想定内の事だ。
相手が洋子なら、昨日嫌いと宣言した以上、気を遣って話す事もない。
未来に見せたくない場面は一つでも回避しておきたい。
涙を拭き、覚悟を決めてドアを開ける朋子。
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