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禁断の果実に口づけを
第21章 カフェオレの追憶
「あっ!!倉橋さん…」
「人目もあるんで中に入って下さい」
「あっ、はい。ごめんなさいね…」
「散らかってますけどどうぞ」
朋子は洋子を家に入れた。
寒い中で話をする程の体力もない。
どうせ耳の痛い言葉を浴びせてくるだろう…。
それなら人目だって気にする。
多分、喧嘩にしかならないだろうと思った。
「ねぇ、倉橋さん朝ご飯食べた?」
「はっ?」
「良かったら食べませんか?
来る途中で買ってきたんだけど…」
手にはファーストフード店の袋をぶら下げていた。
「食欲ないんで!」
「そう。ならカフェオレだけでも…。
あなたの机の上にいつもカフェオレの缶があったから、好きなのかなって思って…」
こんな日常の何気ない事を、洋子が知っているのにびっくりした。
人の事なんて興味などなく、上司特有の発破をかけて気にいらない事があると怒鳴り散らしていた女という嫌な印象しかなかったからだ。
本来、ブラックコーヒーよりカフェオレが好きな朋子。
ミルクや砂糖の入ったコーヒーを好まない健に大人の色気を感じた。
真似するようにブラックを飲むようになったが、美味しいとまでは思わなかった。
会社で一息つきたい時は、迷わず自販でカフェオレを買って飲んでいた。