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禁断の果実に口づけを
第22章 ブス可愛い
食事の後は、普通のカップルがする様なデートをした。
映画館もある大型商業施設に行った。
特別に観たい映画のなかった私は、伸介の観たいものに合わせた。
伸介が選んだ映画はファンタジーあり、コメディーあり、涙ありの中々見応えのある物語だった。
母親がガンになり病院のベッドで過ごすシーンから始まる。
主人公は生意気盛りの高校生で、地味で口喧しい母親を疎ましく思い、そうなるまで反抗ばかりしていた。
モルヒネで痛みを取り、眠る母親。
余命も宣告されていた。
そんなある日、主人公は学校の階段から転げ落ち意識を失う。
目を開けたら、一九九一年にタイムスリップし、ジュリアナのお立ち台で踊る二十五年前の母親に遭遇する。
まだ二十代で若々しく、ボディコン、ソバージュ、真っ赤な口紅とその時代の象徴的なスタイルで、扇子を片手に持ち、お立ち台で華麗に踊る母親。
今とのギャップにびっくりしながらも、未来からやって来た娘だと伝え、近づいてゆく。
最初は相手にもされなかったが、自分と顔が似ていたり、癖や仕草、食べ物の好みまで似ていて、何よりも自分の事を良く知る主人公に胡散臭さを感じながらも、段々信じる様になる。
屈折した二十代の頃の母親と過ごし、『なぁ、あたしはあんたのいいママになってる?』と聞かれて、『自分の事はいつも後回しで家族を大切にする最高のママだよ。私はあなたの娘で良かった』『そう。あんたに会える未来を楽しみに生きれる。私にもそんな未来が待ってるなら、ちゃんと生きなきゃね』
というラスト間近の母と娘の会話シーンには泣けてきて、ハンカチで目頭を押さえていた。