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禁断の果実に口づけを
第23章 本物のQUEEN
「あっ、もしもし朋子さん」
「はい」
「あー良かった!
電話に出てくれて!
ねぇ、今から少し出てこれる?
お嬢さん居るから無理かな?」
「今、実家に居るんです…」
「そうなの。
健に最期のお別れしない?」
「健さんに?」
「えぇ……
あなたさえ良ければ……
優美子さんの最期の情けよ」
「私なんかにどうして………」
「健の為よ。
あなたの為ではないわ。
今から私の言う場所に来て貰える?」
「……はい」
電話を切り、未来を家族に預けて真雪が告げた斎場に向かう。
斎場の前に着き、真雪の携帯を鳴らした。
携帯を耳に当てながら真雪が中から出てきた。
「電話切るわね」
真雪が朋子に近づき、中へと案内する。
「朋子さん。エンバーミングってご存知?」
「いえ。分かりません」
「バーミングってね、遺体を消毒や保存処理して、必要に応じて修復することで長期保存を可能にする技法なんですって。
健が亡くなったのが暮れだったし、年明けまで葬儀が出来なかったのもあるけどね、事故で死んじゃったじゃない。
だから、損傷が激しかったの。
優美子さんね、自分を責めてばかりだったけど、見栄っ張りでお洒落な健をそのまんま天国に行かせられない。
だから出来る限りの事をしてあげたいって。
そ、それで……心置きなく、旅立たせたいって。
あなたに会わせてあげたら、未練もなく、旅立てるんじゃないかって……
だからあなたを呼んであげてって。
なかなか出来る事じゃないわ。
それを踏まえて健に会ってきてね。
あなたもちゃんとお別れして未練は断ち切りなさい」
「…………はい」
「わたしは外で待ってます。
健に邪魔だって化けて出られたら、堪んないもの」
泣きながら健の眠る部屋のドアを開ける真雪。
朋子も涙が溢れ出す。