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禁断の果実に口づけを
第24章 こゝろに凪を
「でも、何だか洋子綺麗になった気がするわ」
と姉が言うと、「お義姉さんは仕事の出来る都会の女性って感じですよね」とお世辞混じりで弟の嫁も言う。
「そうよねー 独身だと若さも保てたり、お洒落にお金が掛けれるもん」姉は僻みを混じらせた。
自分で稼いだお金でお洒落が出来る事は、どうやら幸せな事の様だ。
私から見たら、旦那に守られて子育てをし、家族を持てたこの二人の方が、よっぽど女の人生を謳歌している様に見える。
「じゃあ、口紅の一本でも買ったら」とそんな二人にお年玉を渡した。
「あら、洋子悪いわよー」
「あっ、お義姉さんそんなつもりで私…」
と遠慮気味になりながらも、結局は受け取る二人。
「あっ、洋子姉俺には?」
と手を出す弟。
「女にお金を強請らないの!
男は自分で稼ぎなさい!」
と出した手を叩いて舌を出す。
不思議ね。いつもより優しくなれてしまう。
「洋子、恋人とか居ないの?」
姉は鋭いところを突くが、伸介を恋人として家族に話せないのは切ないもんだと胸がチクリと痛んだ。
「居ないわよー」
そう言って笑う私は哀しいピエロ。
それでも、恋はしないよりした方がいい。
忘れかけた感情を取り戻し、潤いを与えてくれる。
幸せな事ばかりじゃないから、喜怒哀楽繰り返し、感情も豊かになる。
何気なく、思い浮かべる人が心に居るって事が、恋する女の特別な時間そのもののなのではないか?
私はそんな恋をしているんだ。
「でもさ、洋子。お世辞抜きで綺麗になったよ」
多分、恋には女を盛り上げるパワーもあるんだ。
「そりゃどーも!」
私は笑う。
笑う門には福来たると信じたい。
でも、いずれ訪れるであろう伸介とのサヨナラに怯えてしまう。
結婚とか家族になりたいなどと叶わぬ思いは抱かない。
そばにいたい。
出来るだけ長く。
そう願ってしまう……