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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
席に着くなり、矢継ぎ早に倉橋朋子に関して聞いてくる。
「連絡は取れましたし、自分から処分が下るまで謹慎すると言ってました」
「まぁ、そうして貰えると助かるが……
肝心な契約者の風間健さんが亡くなった今、横領の疑いや不倫に関して奥さんがどう出てくるかだ」
「明日、風間健さんの葬儀になるそうです。
お悔やみを兼ねて顔を出そうかと思います」
「あぁ、そうした方が懸命だね。
まぁ、事故の加害者よりは恨まれる負担は少ないだろうけどね。
それに倉橋は風間さんにかなり沢山の保険を加入させていただろう?
事故死亡なら早急に保険金が下りるし、そのうち奥さんが請求してくるだろう。
冷めた夫婦だったならしてやったりじゃないか?
その請求の手続きも倉橋にやらせるわけにもいかないだろうから、代理に頼みます」
『それって、口に出して言う事か?』
「はい…」
「支店長にも報告はしてはいるが、相手は大手アパレル会社の社長さんだ。
事故も大きいものだったし、仮に横領の事まででっち上げられてスキャンダルにならないといいが……」
「はぁ。そうですね。
あの……実は風間様の奥様と北原さんはお知り合いの様ですよ」
「えっ?ならさ、北原に仲を取り持って貰えないの?」
「多分、そのつもりで話してくれたんだと思います」
「直ぐに北原を呼んでよ!」
『この男は丸く収めて、責任逃れをしたいのだ。
北原晴美が取り入ってでも、自分の立場を守るだろう。
部下の心配より自分を優先する。
この卑しい目の輝き。
人間というのは、危機になった時ほどその人の性分というものが明らかになる』