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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
洋子達は葬儀に参列し、お焼香の順番を待った。
喪服姿の優美子はやつれてはいたが気丈に振る舞っている様に見えた。
あの応接室での意地悪で人を見下す冷たい表情とは打って変わり、故人を偲ぶ、美しく気高い女性を思わせた。
遺影の写真で初めて風間健の顔を知る。
優しそうで自信に溢れた笑顔。なかなかのハンサムな顔立ち。
二人の女を愛憎劇に巻き込む程、魅力的な男だったのでだろう…。
焼香の順番が来ると、優美子は晴美と目が合い、頭を下げていた。
やはり知り合いの様だ。
そして、焼香の順番が洋子の順番になった時にも優美子は頭を下げた。
WHITECANDY 社の代表取締役社長の葬儀だけあり、かなり大規模な社葬だった。
年末の首都高大事故の被害者という事で、マスコミなども押し寄せ、テレビカメラなども葬儀の模様を中継をしていた。
昨日の時点で倉橋朋子が担当した風間健名義の保険内容を全部調べてみたが、保険請求があれば、下りる額は三億円以上の額になる。
修羅場の末に愛人が勧めた保険で、夫の保険金を受け取る。
何とも皮肉な話だ。
優美子はお金には恵まれてるかもしれないが、夫があんな事故に巻き込まれてしまうなんて不運を背負った女なのかもしれない。
世の中金次第とはよく言われるが、お金があっても報われない事も沢山ある。
お金が沢山あっても、心が寂しいのも切ない。
世の中には、丁度いいというものの方が希少なのかもしれないと染み染み洋子は思った。