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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
葬儀から数日後、優美子が営業所に訪れ、保険金の請求手続きをした。
応接室でその対応は行われた。
所長は優美子にお悔やみの言葉や今回の件に対し、丁寧な言葉で対応しながらも、どうしても抜けられない会議を控えてると言訳を残し、席を立った。
洋子も健のお悔やみを言い、朋子の失態を改めて謝った。
「あの時は、私も取り乱してみっともない姿を晒してしまい、申し訳ありませんでした。
もう、重箱の隅をつつく様な事も致しません。
亡くなった風間の名誉を守る為にも、あの事は表沙汰にする気もありません。
ゆっくり眠らせてあげたいじゃないですか…」
あの時の棘のある言い方をしていた同一人物とは思えない程、穏やかな口調の優美子。
「では、許して頂けるのですか?」
「但し、もう、あの方とは関わりたくないのです。
担当は外して頂けませんか?」
「はい。それは承知致しました」
「優秀な外交員さんでした」
「えっ?」
優美子の意外な言葉につい声が出てしまった洋子。
「風間の事を考えて、隅々まで行き届いた保険を勧めて下さった事は間違いありません。
私とは馬が合わなかったのが残念ね」
そう言って笑みを浮かべた。
もうすぐ手に入る多額な金に目が眩み、朋子を許すと言っている訳ではない。
優美子の表情を見れば、それがよく分かる。
目から鱗が落ちた様にスッキリした気持ちで素直な言葉を述べているのだと思った。
「では、今後は北原が倉橋の代わりに担当という事で宜しいでしょうか?」
「はい。構いません。
今度は私の名義で利率のよろしい保険に加入を考えてます。
折角、安全な場所に資産を預けられる場所を見つけたのですから」
「有難う御座います」