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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
「秋山さん…
あの人はどうしてます?」
「それは倉橋の事でしょうか?」
コクっと頷く素振りを見せ、優美子は話し始めた。
「これは私の独り言ですが、心の闇がなくなると案外スッキリして、物事が上手く運ぶ知恵が不思議と降りてくるもんですね。
疚しい事はいつか表に出てしまう。
人間ですから、いつも正しい事なんて出来ません。
それは私も同じ。
どう改めてゆくかで自分の行方を知る事が出来る様な気がするんです。
私は風間の会社を守ってゆきます。
それが、妻として風間に最期に託された事だと思ってます。
その第一歩が過去の事は全て水に流す事でした。
上手く言えませんが、嫌いな人間ほど距離は置きたくなっても、気になるもんなんではないでしょうか?」
「はい。それは必ず倉橋には伝えます」
「秋山さん、これはあくまでも私の独り言ですよ」
そう言って笑う、目の前の美しい女(ひと)。
心優しく正直な心の表れが、美しい顔や気高さを表情として作ってゆくものなのかもしれない。
心の在り方一つで顔は変わるのだと改めて思った。
生きてると、出会った人達にいろいろ試されたり、魅せられりを繰り返す。
そうする事で自分というものも磨かれてゆくのかもしれない?
「この度の事、本当に有難う御座います」
「後の事は宜しくお願いします」
優美子は綺麗な笑顔を残して、洋子の前を去る。
深々と頭を下げて、その姿を見送った。