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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
優美子が帰った後、外から戻ってきた所長は事の成り行きを洋子に聞いてきた。
大事な事なのに、人任せにするこの男にムッとしながらも、優美子が今回の事は表沙汰にしないと告げると、ホッとした顔をする。
『多分、成り行き次第でどうにもならなくなったら、責任を全部私に押し付ける魂胆なんだろう…。
この男の卑怯なところに嫌気が差す』
と思いながらも、事実を話していった。
「穏便に済んで助かったよ。
まぁ、北原の口添えもあったんだろうから感謝しないとな。
それに何だかんだ言っても、浮気亭主は多額な保険金を遺して死んでくれたんだ。
あの奥さんだって内心は喜んでるんじゃない?
寧ろ、倉橋にムカつきながらも感謝してんだろ。
あいつが勧めた保険がそれに結びついてんだから」
「所長!
今のお言葉はあんまりにも不謹慎だと思います。
風間様がお慈悲でそうして下さったのだと、私はそう感じましたが!」
洋子のその一言に、バツの悪い顔をしながらもムッとする所長の柿沼。
「まぁ、とにかくこれでこの話は終わりだ。
支社長も心配しているから、支社に行ってその旨を話してくる。
倉橋には自主退職して貰う事になるだろう。
倫理に反して仕事をした事は、他の者に示しがつかない。
信用も同時に無くしたのと同じ事だ。
そういう人間には辞めて貰うしかない。
その手続きも代理に任せます」
「……はい」
馬鹿正直で薄っぺらい人間の下で働くのも辛い運命(さだめ)だと思った。
『こんな奴の指示に従わなきゃいけないなんて……』
洋子の心に怒りがこみ上げた。