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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
「北原リーダー いろいろとお世話になりました。
最後はこんな形になってしまって、本当に申し訳ありません」
「あら、何言ってるの水臭いわ。
私こそ力になってあげれなくてごめんなさい」
「いえ…。
私の方こそ、北原リーダーの面子を潰すような事をしてすみません」
「いいの。
この仕事を勧めたのは私。
私がもう少し気にかけてあげてれば、こんな事にならなかったわね。
自分でいっぱいいっぱいなとこあるから……
かえってごめんなさい。
もう気にする事ないわよ」
晴美は少し涙ぐみ、言葉を詰まらせる(芝居をした)
「本当にすみません」
「頑張ってね。朋ちゃん。
ご近所さんなんだから、これからも気軽に声掛けてよ!」
晴美は朋子の肩をポンポンと叩き、激励のポーズを取る。
何も知らない朋子は、最後まで晴美に頭を下げっぱなしだった。
冷ややかな視線は朋子に容赦なく突き刺さったが、『嫌な事は一瞬』と割り切り、辛くなるとスーツの上着のポケットの中にいれて、健からクリスマスプレゼントに貰った指輪を握った。
『乗り切らせて』と握りながら祈った。
口々に朋子に最後の挨拶をする同僚達も、皮肉こそは言わないが、心が篭ってない口先だけの言葉を言ってゆくだけだった。
朋子はその度に頭を下げた。
『あと少しだ。負けんなよ!』
ポケットを探る度、健がそんな風に言ってくれてる様に感じた。
『負けないよ。生まれ変わるんだもん』
指輪をギュッと握る。
『これはお守り。私が二度と道を踏み外さない為の』