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禁断の果実に口づけを
第25章 こゝろ次第
痛々しい朋子の姿を遠目で見ていた洋子。
「倉橋さん、終わったかな?
手続き取ろうか?
応接室に来て貰える?
あっ、挨拶を済ませてから来て下さいね」
『針のむしろから解放してあげないと…』
洋子はそんな気持ちになり、朋子を呼んだ。
「はい」と返事をし、洋子の計らいに感謝した。
応接室で退職の手続きを取る。
脳裏にあの日の優美子との事が蘇る。
「倉橋さん、闇を追い払うと自然と良い知恵が降りてくるらしいです。
その第一歩が過去を全て水に流す事なんだそうです」
「秋山代理……」
「残念ながら、これは私の言葉ではありません。
私はそんな立派な事を言える人格者でもありません。
きっと、この言葉を倉橋さんに残した方は、人一倍、倉橋さんの事を考え、自分とも向かい合い、辛く、哀しく、悔しさの中で導き出した言葉だと思います。
間違いは誰にでもあります。
その間違いをどう改めてゆくかで、自分の今後の行方が分かると言っておられました。
これからは、ご主人の会社を守ってゆくそうです。
そう託された様な気がしたのだと……」
書類を書く朋子の手が止まり、涙を流していた。
「秋山代理……
私はその方のお陰でこれから自分がどう生きていきたいのかが、はっきり分かりました」
「そうでしたか。
人の出会いには…無駄な事なんてないと私も思います。
倉橋さんがその方に出会った事により、本当の居場所を探す事が出来たんじゃないかと思うんですよ」
「……はい」