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禁断の果実に口づけを
第28章 毒リンゴ

 
 「本当に分かりやすいですよね。マジで伸ちゃんに恋したとかですか?少しばかり優しくされたらよろめいたとか?」

 「……片岡さんには親切にして頂きました。
感謝してます」

 「惚けなくていいですよ?
その翌日覚えてますか?
秋山代理、私にお礼言ったんですよ?
癒やされて満たされた女の顔をしてね。
何があったか予想出来ちゃいましたよ。
本当、分かりやすっ!」

 「……川端さん、それを分かっていながらではないんですよね……」

 いつかは触れなきゃいけない事を勇気を出して聞いてみた。
目の前の伊織は何もかもお見通しで挑発しているのだから。

 「えっ!? 何それ? あーあー ヤダヤダ!
人の恋愛とかまで左右するって可能なんでしょうか?
それとも、私にはそんな魔法が使えるとでも言うんですか?
大体、その先の事は秋山代理と伸ちゃん次第で決めるもんでしょ。
そこまで私のせいにする気ですか?
何処まで自分が可愛いんですか?」

 「……全くその通りね。川端さん。
心はその人のもの。
だから、心が決めるものですものね…」

 「私は秋山代理が困っていたから、伸ちゃんを紹介した。
あくまでも、パンクの修理としてね。
その後、二人がどうなろうと私の知った事ですか?」  

 「感謝してます。本当にただ……」

 「ただ?ただ何なんでしょ?
あっ、でも、秋山代理の変貌ぶりは面白かったですよ!
恋するとここまで人は変われる。
単純なんですね?」

 
 川端伊織のまくし立てる様な言い分に反論の余地もない。
正論をキツイ口調で言い、小馬鹿にしているだけだ。
以前、私が彼女にそうしてきたように……

 ずっと馬鹿にしてきた女は、どうやら私なんかよりもずっと頭の良い人間だったらしい……
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