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禁断の果実に口づけを
第29章 三日天下
応接室を出た時は、外は暗く夜を迎えていた。
他の所員達はみんな帰ったみたいで、営業所はガランとしていた。
最悪の事態の中にも幸いはあるもんだと思った。
「わたしのパソコンからはあの動画は削除します。
本社や支社長宛に送られたものは、多分保存されていると思います。
北原さん、動画を送った者の詮索をするのは辞めて下さい。
騒ぎが大きくなりますし、もし、その様な事をした場合はネットにあの動画は拡散すると送り主のメッセージにあったそうです。
今回の事は、非常に残念に思います」
なるべく優しい口調で接する所長。
「……はい」
弱々しい返事をして、営業所を後にした北原晴美。
『フゥ』と大きな溜息が出た。
洋子も日報をパソコンに入力し、所長に『お疲れ様でした』の言葉を残して営業所を後にした。
長くて最悪な一日が終わろうとしていた。
駐車場に向かって歩いていたら、不意に夜空を眺めた。
冬の星座は綺麗だというが、星もまばらに見え、寂しい気持ちになった。
瞳から流れ出す、一筋の涙。
『生きるって大変。
一人はやっぱり寂しい』
洋子は心で呟く。