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禁断の果実に口づけを
第30章 ビターなあいつが恋しくて……

 洋子も自分にいずれ来るであろう、お達しに怯えた。
多分、伸介という存在がなければ、嫌われても構わない、管理者なら転勤は当たり前。
こんなクズの集まりの職場なんて、こっちから三行半だよ。
くらい開き直れたかもしれない。
でも、このクズ達に教えられたのだ。
人を不幸にし、傷つけて上にのし上がっていっても、嫉妬や悪しき心、憎悪を隠して、いつかその鼻をへし折るチャンスを狙っている。

 悪い事は出来ない。
してしまえば、因果応報の罪で裁かれる。
その裁きを見てきたものは、自分を偽ってでも安全地帯に居る事を望んでしまうだろう。
敢えて修羅の場で戦わなくとも、自分を守る場所は確保出来る。

 いつも鋭く刺す視線を感じた。
川端伊織の挑戦的な目だ。
あの時、あんなに強気で立ち向かってきたのは、こうなる事をお見通しで計算していたのであろう。

 『フン!』と蔑む視線は、散々洋子が伊織に向けてきた視線だった。
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