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禁断の果実に口づけを
第32章 記憶の欠片
ポカポカ陽気で病室にも春の木漏れ日が差す。
入院してなければ、出掛けたくなるようなお天気。
回診にやって来た医師に外に出たいとお願いをすると、『車椅子貸しますよ。たまには外の空気吸ってみますか?』と快く了解してくれたので、コーヒーを飲みながら病院の中庭に出ようとはしゃいだ。
パジャマに厚手のカーディガンを羽織、車椅子に乗る。
そこまでは看護師さんが手伝ってくれた。
「外の空気、吸ってきます」と声を掛け、車椅子に乗り病室を出た。
一階の売店に寄り、温かいコーヒーを買おうとしたら、「洋子!!」と見知らぬ男性から声を掛けられ警戒する。
「コーヒーどれ飲むんだよ?」とまた声を掛けられ、戸惑っていると、「ホットでいいな。ミルクと砂糖は?」とせかされ、「ブラックで…」と言うとニッコリ笑って、「運動不足だろうから、ブラックにしとけな!」と言われ、さっさと缶コーヒーを会計に持っていかれてしまった。
その男性が再び戻ると、車椅子の後ろを押す。
「何処行く?病室か?」
「な、中庭で……日向ぼっこ…」
「了解!
病室ばっかだと干からびるからなー」
「あっ、あのぅ………」
「心配すんな。
お前を見舞うはずだった片岡伸介だから」
「あなたが!?」